感想

サッカーの試合や舞台・映画、観たものについて

初めてJリーグ優勝を味わった鹿島サポーターの感想。

 

 

勝つ想像しかできない。

 


そう呟くとフラグになりそうで言わなかったけれど、2点とって鹿島が優勝する。CS第1戦が終わってから私はそれしか考えられなかった。
6点も必要とかじゃないから大丈夫、最後に満男がシャーレを掲げるでしょ、そんなポジティブな鹿島サポーターの呟きもまた、私の想像を確かなものにした。

とはいっても、私はリーグ優勝を味わったことがなかった。鹿島を応援して初めての優勝は昨年のナビスコ杯(現ルヴァン杯)。その時はただただ嬉しかった。やったーーー!と両手をあげて喜ぶだけだった。これまでの辛さや悔しさを思い出して涙するまでもいかなかった。


もし鹿島がリーグ優勝したら、私はどう思うだろう。どんなことを感じるだろう。もし優勝したら、どう感じたかブログにでも書こうか。これから先長いであろうサポーター人生のために、初めて味わうリーグ優勝の瞬間の気持ちを書き残しておきたい。では書き出しはどうしようか、、そんな妄想もしていた。(逃げ恥のみくりに似て妄想は得意なのです。)

 

 

 想像通り、鹿島アントラーズは優勝した。

1失点目、周りの浦和サポーターが歓喜に沸くなか、私たち鹿島サポーター4人は至極冷静だった。「2点とればいいことに変わりはないよね」「2点とってこれ以上失点せずに勝てば優勝だから」「まだ1点はとられても大丈夫」そんなことを確認し合っていた。その声が聞こえたのか、近くで「鹿島は2-0でも2-1でも勝てば優勝?」「あんま変わらないってこと?」などと話している声が聞こえた気もするが、もう意識は次のプレーに向いていた。


私はただ願うばかりだった。鹿島が2点とって勝つ。鹿島が2点とって勝つ。1失点目直後の武藤選手のバーに直撃したシーンも、ギリギリで昌子選手が足を伸ばしたシーンも、あぁ~!と驚くこともなく、ただただ大丈夫、入らない。大丈夫、鹿島が勝つ。と両手を組んで念じていた。その姿はただの銅像。いま思えば、それで観戦楽しいの?と思われる光景かもしれない。一つひとつのプレーに一喜一憂するのが楽しいんじゃないの?と。それでも、この時の私は優勝がしたいだけだった。



そういえば決勝戦の前、他チームのサポーターに楽しんで来てくださいと言われたことがあった。こちらを想ってくれたその言葉は素直に嬉しかったが、正直、少し違和感もあった。
楽しむために行くのか…勝つから、楽しいと思えるのではないか。いくら試合内容が良くても、勝てなければ手放しに楽しかったとは思えない。もちろん、勝つことだけが全てではなく、試合前後の楽しみなどもおおいにある。試合に負けても観戦が楽しかったと思えることは沢山ある。そんな敷居は高くない。でも、今回のような優勝がかかった試合では、楽しむ前に、勝たなければどうにもならない。その瞬間が楽しくなくても、優勝したら何でも楽しいのだ。


何気なくかけられた言葉だったかもしれないが、こんなことも考えつつ(これは負けず嫌いな性格がゆえの部分があると思うのであまり参考になりません)、試合の話に戻ろう。

 


同点になった瞬間、思わず立ち上がり喜んだ。観戦していた場所はメインアッパー南で両サポーターが入り混じっていたが、ここで仲間の位置を把握する。思ったよりも紛れていた。嬉しい。その直後「あと1点!」「まだ優勝してない!」と、とにかく前半が1-1で終わることを祈った。

次に立ち上がったのはPKが決まった瞬間だった。たぶん。正確に言えば覚えていない。とにかく喜んでいた。友人とハイタッチをして、優勝に近付いた!と想像が現実になる予感をダメだダメだ、まだ優勝は決まっていないと頭で押し殺しながら、自然と大きくなる鹿島のチャントと手拍子に思いを馳せていた。 #突然のポエマー


得点はサポーターを動かす。それまで遠慮がちに手拍子をしていた周りの鹿島サポーターも、私自身も、次第に手拍子が大きくなる。鹿島のチャンスに大きく反応する。相手のチャンスでひたすら願うことに変わりはなかったが、一喜一憂する楽しさが味わえるようになったのは2点目が入ってからだった。



リーグ優勝した、という実感はなかった。

友人たちとハイタッチをしたり、抱き合う瞬間におデコと顔がぶつかってアイタタタとなったり、満男さんがシャーレを掲げるのと同時に発射される金粉(?)を綺麗だなと眺めたり、、これまでの過程を思い返して泣くようなこともなく、ふわふわと、土居選手と同じく「夢のよう」だった。

それでも途中から、誇らしいと感じるようになった。

初めて聞いたチャント「我ら~Jリーグチャンピオン~♪」最初は何を言っているのか分からなかった(ごめんなさい)。聞き取れずよく聞いてみて、意味が分かった時の高揚感。リーグ優勝のときにしか歌わないチャントなんだと分かり、それが聞けた喜びとそれを知っているサポーターの多さに驚いた。
錨を上げろは特に誇らしかった。ビジター席でもないメインアッパーだけど、ここにも鹿島を応援していた人がいるよ!選手に届け!と願いながら歌った。

 


試合後、初めてリーグ優勝を経験するサポーターが喜んでいることが本当に嬉しい、という言葉を見かけた。長年応援している先輩サポーターの声だ。

思えば試合前から、鹿島はこれまで無謀な逆転もしてきたから大丈夫。色んな予想をひっくり返しちゃうのが鹿島。鹿島ならできる。そんなサポーターの声が、私を勇気付けてくれていた。

自分自身にその経験がなくても、鹿島なら出来る気がする。そう思えるほど、経験に裏付けされた信じる力と諦めない心が、サポーターからサポーターへと伝わっていた。

 

「フラグになりそうで言わなかったんだけど、勝つ想像しかできなくて」

「私も!本当に勝って良かったね」

 同じく初めてリーグ優勝を味わう友人と、試合後に交わした言葉。


誰もがチームの勝利を願っている。それしか想像できなかったなんて勝ったから言えるだけのことかもしれないし、最悪の場合を想像しておくことも必要かもしれない。けれど、応援しているチームが負ける想像なんてできればしたくない。負ける時のことは負けた時に考えればいい。


これからも私は、勝つことだけを想像して、鹿島アントラーズを応援していきたい。